「愛と死」

「愛と死」が、読むものの心にあたたかく自然に触れてゆくところをもった作品であることはよくわかる。武者小路実篤氏の独特な文体は、『白樺』へ作品がのりはじめた頃から既に三十年来読者にとって馴染ふかいものであり、しかもこの頃は… 続きを読む 「愛と死」

愛と婚姻

媒妁人先づいふめでたしと、舅姑またいふめでたしと、親類等皆いふめでたしと、知己朋友皆いふめでたしと、渠等は欣々然として新夫婦の婚姻を祝す、婚礼果してめでたきか。 小説に於ける男女の主客が婚礼は最めでたし。何となれば渠等の… 続きを読む 愛と婚姻

愛読書の印象

子供の時の愛読書は「西遊記」が第一である。これ等は今日でも僕の愛読書である。比喩談としてこれほどの傑作は、西洋には一つもないであらうと思ふ。名高いバンヤンの「天路歴程」なども到底この「西遊記」の敵ではない。それから「水滸… 続きを読む 愛読書の印象

愛読した本と作家から

いろ/\なものを読んで忘れ、また、読んで忘れ、しょっちゅう、それを繰りかえして、自分の身についたものは、その中の、何十分の一にしかあたらない。僕はそんな気がしている。がそれは当然らしい。中には、毒になるものがあるし、また… 続きを読む 愛読した本と作家から

愛する人達

ばうばうとした野原に立つて口笛をふいてみても もう永遠に空想の娘らは来やしない。 なみだによごれためるとんのずぼんをはいて 私は日傭人のやうに歩いてゐる。 ああもう希望もない名誉もない未来もない。 さうしてとりかへしのつ… 続きを読む 愛する人達

合図の旗

日本の民主化と云うことは実に無限の意味と展望を持っている。 特に一つ社会の枠内で、これまで、より負担の多い、より忍従の生活を強いられて来た勤労大衆、婦人、青少年の生活は、社会が、封建的な桎梏から自由になって民主化するとい… 続きを読む 合図の旗

愛人と厭人

有島武郎君の「惜みなく愛は奪ふ」は出版されるや否や非常な売れ行きであるさうな。しかし売れ行きといふことが直にその本の真価を示すものではないと同時に、売れ行く本は直に俗受けのものと独断して、文壇の正系(?)が之を無視するの… 続きを読む 愛人と厭人

愛書癖

パリに遊んだ人々は誰でもセーヌ左岸に列んでいる古本屋を決して忘れないだろう。店と云っても、家ではない。唯、セーヌ河岸の石崖の上に、無数の古本の箱が、石崖の続く限り――と云うと少し話が大きくなるが、――サン・ミシェル河岸か… 続きを読む 愛書癖

逢状

祇園で今では見られなくなつたものに、「雑魚寝」のほかにもうひとつ「逢状」というものがある。 これは客が来た時に茶屋から名差しの芸妓や舞妓に出すものであつて、大体葉書大位の紙に、「××さまゆゑ直ぐさまお越しねがひ上げ候」と… 続きを読む 逢状

哀詩数篇

くらがり なすによしなき哀れさよ、 早や日数経て、今日の日も 暗がりわたる物おもひ。 水や空なる波の上に、 淋しくかゝる綾雲は、 やがて消ゆべき希望かや。 その希望もて吾が道は、 深海の底の青貝の、 螺線の中のゆきもどり… 続きを読む 哀詩数篇

哀詞序

歓楽は長く留り難く、悲音は尽くる時を知らず。よろこびは春の華の如く時に順つて散れども、かなしみは永久の皷吹をなして人の胸をとゞろかす、会ふ時のよろこびは別るゝ時のかなしみを償ふべからず。はたまた会ふ時の心は別るゝ時の心の… 続きを読む 哀詞序

愛妻家の一例

ルナアルの日記を読んで、いろいろ面白い発見をするのだが、彼は自分の少年時代を、「にんじん」で過したゞけあつて、大人になつてからも、常に周囲を「にんじん」の眼で眺め暮した世にも不幸な人間なのである。一度は友達になるが、その… 続きを読む 愛妻家の一例

愛護若

一 若の字、又稚とも書く。此伝説は、五説経の一つ(この浄瑠璃を入れぬ数へ方もある)として喧伝せられてから、義太夫・脚本・読本の類に取り込まれた為に、名高くなつたものであらうが、あまりに末拡がりにすぎて、素朴な形は考へ難く… 続きを読む 愛護若

愛国百人一首評釈

大宮の内まで聞ゆ網引すと網子ととのふる海人の呼び聲長奧麻呂 この歌は長忌寸奧麻呂(傳記未詳)が文武天皇三年正月、難波宮に行幸あそばした時に供奉して、詔を奉じて詠んだものである。(大體さういふ學説になつてゐる)。 一首の意… 続きを読む 愛国百人一首評釈

愛国歌小観

今日は愛國歌について一言を徴せられたが、大東亞戰爭の勃發して以來、國民が奮つて愛國歌を讀み、朗誦し、萬葉集に載つた、『海ゆかば水漬く屍山ゆかば草むす屍大皇の邊にこそ死なめ顧みは爲じ』や、『けふよりは顧みなくて大君の醜の御… 続きを読む 愛国歌小観

愛卿伝

胡元の社稷が傾きかけて、これから明が勃興しようとしている頃のことであった。嘉興に羅愛愛という娼婦があったが、容貌も美しければ、歌舞音曲の芸能も優れ、詩詞はもっとも得意とするところで、その佳篇麗什は、四方に伝播せられたので… 続きを読む 愛卿伝