青い紐

桃山哲郎は銀座尾張町の角になつたカフエーでウイスキーを飲んでゐた。彼は有楽町の汽車の線路に沿うたちよつとしたカフエーでやつた仲間の会合で足りなかつた酔を充たしてゐるところであつた。 もう客足が斑になつて其処にはすぐ前のス… 続きを読む 青い紐

青い紐

桃山哲郎は銀座尾張町の角になったカフェーでウイスキーを飲んでいた。彼は有楽町の汽車の線路に沿うたちょっとしたカフェーでやった仲間の会合でたりなかった酔を充たしているところであった。 もう客足が斑になってそこには前のすぐス… 続きを読む 青い紐

藍微塵の衣服

これは東京の芝区にあった話である。芝区の某町に質屋があって、そこの女房が五歳か六歳になる女の子を残して病死したので、所天は後妻を貰った。 後妻と云うのは、気質の従順な、何時も愉快そうな顔をしている女で、継子に対しても真の… 続きを読む 藍微塵の衣服

愛卿伝

胡元の社稷が傾きかけて、これから明が勃興しようとしている頃のことであった。嘉興に羅愛愛という娼婦があったが、容貌も美しければ、歌舞音曲の芸能も優れ、詩詞はもっとも得意とするところで、その佳篇麗什は、四方に伝播せられたので… 続きを読む 愛卿伝

藍瓶

玄関の格子戸がずりずりと開いて入って来た者があるので、順作は杯を持ったなりに、その前に坐った女の白粉をつけた眼の下に曇のある顔をちょと見てから、右斜にふりかえって玄関のほうを見た。そこには煤けた障子が陰鬱な曇日の色の中に… 続きを読む 藍瓶