ズルタンじいさん

『ズルタンじいさん』の解説

  • タイトルズルタンじいさん
  • 著作者グリム兄弟
  • 書籍名ズルタンじいさん
  • 制作年?
  • 製作国不明
  • 言語不明
  • 著作権状態パブリック・ドメイン
  • 『ズルタンじいさん』の全文

    昔、農民ががズルタンという忠実な犬を飼っていましたが、年をとって歯が全部なくなってしまったので、もはやなにもしっかりとは咥えることができませんでした。ある日、農民は、奥さんと家の扉の前に立っていて、「明日、年寄りのズルタンを撃ち殺すつもりだ、ズルタンはもう役に立たない。」と言いました。

    奥さんは、忠実な動物を哀れに思って、「ズルタンはわたしたちにかなり長い間尽くしてくれて、とても忠実だったのだから、飼っていた方がいいよ。」と答えました。

    「え!何? 君はあまり利口でないな。ズルタンには歯が一本もないんだぞ。そんな犬を怖がる泥棒はいないだろ。今離したほうがいい。もし私たちに尽くしたとしたら、その分たっぷりえさをもらっただろ。」と農民は言いました。哀れな犬は近くの日向で体を伸ばして横たわっており、全部聞こえていたので明日が自分の最後の日になるんだなと落胆しました。

    ズルタンには仲のよい友達である狼がいて、夜抜け出して森の狼のところへ行き、自分を待っている運命について不満を述べました。

    「おい、お前、元気を出せよ。お前を苦しみから救ってやるよ。いいことを思いついた。明日朝早く、お前の主人は奥さんと一緒に干し草を作りに行くだろ。それから小さな子供も一緒に連れて行くだろ。というのもだれも家に残ってないからな。仕事中、彼らは子供を生垣の日陰においとく習慣がある。まるでその子を守りたいと願うように、お前もそこで寝ろ。 それから俺が森から出てきて子供を連れ去る。お前はまるで俺から子供を取り返すようにすばやくおれのあとを追って走ってこなくはいけない。俺は子供を落とすから、お前は両親のところへ子供を返すんだ。すると親たちはお前が子供を救ったと思って、非常に感謝してお前にひどいことはできなくなる。それどころかとても気に入られて何も不足がないようにしてくれるだろう。」と狼は言いました。

    その計画がズルタンは気に入りました。そしてまるで取り決められていたかのように行われました。父親は、狼が子供をくわえて野原を走って行くのを見ると悲鳴をあげましたが、年寄りのズルタンが子供を連れ戻ると、大喜びし、ズルタンを撫でて、「お前の毛一本だって傷つけないし、お前が生きてるかぎりおれのパンをただで食べていいぞ。」と言いました。

    そして奥さんに向かって、「すぐに家へ帰って、噛まなくてもいいように年寄りのズルタンにパンがゆを作ってやれ。それから俺のベッドから枕をもってきてくれ、それを寝るのにやろう。」と言いました。それ以降、年寄りのズルタンはこの上ないほど裕福になりました。

    その後すぐに狼がズルタンを訪ねてきて、全てが非常にうまくいったことに喜びました。「しかしまあ、もし機会があった時おれがお前の主人の太った羊をさらっていったとしても、お前はただ見て見ぬふりをしろよ。」と狼は言いました。「そんなこと当てにしないでくれよ。僕は主人に忠実でいるよ。それは認められないよ。」とズルタンは答えました。

    狼は、犬がこれを真面目に言ったはずがないと思って、夜に忍んできて、羊をとっていこうとしました。しかし、農民は、忠実なズルタンが狼の計画を話しておいたので、狼を捕まえ、殻さおでこっぴどくたたきました。狼は出て行くしかありませんでしたが、犬に「待ってろよ、この悪党、仕返ししてやる。」と言いました。

    翌朝、狼は猪を送ってこの事件に決着をつけるため、ズルタンに森へ来いと要求しました。年寄りのズルタンは3本しか足のない猫以外には誰も味方してくれる仲間を見つけられませんでした。そして一緒に出かけたとき哀れな猫はノロノロ進むと同時に痛さで尾を空中に伸ばしていました。狼と友達はもう指定した場所に来ていましたが、敵が近づいてくるのを見たとき、犬が軍刀を持ってきていると思いました。というのも猫の伸びている尾を軍刀と間違えたからです。

    そして哀れな猫が、3本足でぴょんと飛ぶと、そのたびに自分たちに投げる石を拾っているのだとしか考えられませんでした。それで二人とも怖くなり、野生の猪は木の下に這いこみ、狼は木の上に跳びあがりました。犬と猫はやってくると誰も見えないので不思議に思いました。しかしながら、野生の猪は完全には隠れきれず、耳の片方がまだつき出ていました。一方、猫は注意深く見まわしていると、猪が耳を動かしたので、猫はそこでネズミが動いているのだと思い、それに跳びついて思いっきり噛みつきました。

    猪は恐ろしい悲鳴をあげて、「悪いやつは、木の上だ。」と叫びながら逃げて行きました。犬と猫は見上げて狐を見ました。

    狐は自分がとても臆病なのを見せてしまったことを恥ずかしく思い、ズルタンと仲直りしました。

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