怠け者の糸くり女

『怠け者の糸くり女』の解説

  • タイトル怠け者の糸くり女
  • 著作者グリム兄弟
  • 書籍名怠け者の糸くり女
  • 制作年?
  • 製作国不明
  • 言語不明
  • 著作権状態パブリック・ドメイン
  • 『怠け者の糸くり女』の全文

    昔、ある村に亭主と女房が住んでいた。女房は大変な怠け者で働こうとはしなかった。亭主が女房に糸紡ぎを頼んでもすることはなかった。そのうえ、女房は紡いだ糸を巻かなかったので、もつれた糸が山のようになって残っていた。亭主が女房を叱ると、いつも皮肉たっぷりに言った。

    「そうね、私は糸紡ぎ用の枠を持っていないから、どのように巻いたらいいのかしら。森へ行って私のために枠を一つ作ってよ。」

    すると亭主は「それなら、これから森へ行って枠を作るための木を取ってこよう」といった。

    その時、女房は、もし亭主が女房のために枠を作るための木を取ってきたら、糸巻が始まると思い心配になった。女房は少しの間しっかり考えた。そしてよい考えがひらめいた。女房はこっそり亭主の後を追って森へ向かった。亭主が木を選びその木を伐り始めたとき、女房は亭主に気づかれないようにそーっと小藪へ近づいて下から叫んだ。

    「糸巻枠のための木を切る者は死ぬよ。糸巻く者は死ぬよ。」

    亭主はその声を聞いて少しの間斧を下におろした。そしてその意味を考え始めた。いったい何なんだ。私の耳はじんじんしている。心配なことは何もない。それで亭主は再び斧をつかみ切り始めた。するとその時再び下のほうから声がした。

    「糸巻枠のための木を切る者は死ぬよ。糸巻く者は死ぬよ。」

    亭主は手を止めた。恐怖を感じ、その出来事をよく考えてみた。しばらくして、亭主はまた元気を取り戻し、三たび斧に手を伸ばし木を伐り始めた。しかし、三度目誰かが大声で叫んだ。

    「糸巻枠のための木を切る者は死ぬよ。糸巻く者は死ぬよ。」

    亭主にはもう十分だった。亭主は木を切るのをやめ、木から降りて家路に向かった。女房は早く家に帰るためわき道を通って、できる限りの速さで家に向かった。亭主が部屋に入ってきたとき、女房はまるで何事もなかったかのような無邪気さで言った。

    「ねえ、糸巻枠のための素敵な木をとってきてくれたの?」

    「いいや」と亭主は答えた。「糸巻はしないほうがいいことがわかったんだ。」と言って、森の中で起こったことを女房に話した。

    その前から、女房は安堵していた。それにもかかわらず、そのあとも亭主は再び家の中で不平を言い始めた。「お前」と亭主は言った。

    「巻いた糸をそこらじゅうにほったらかしていて恥ずかしくないのか」「じゃ、言わせてもらうけど」と女房は言った。

    「糸巻枠がないのだから、あんたが屋根裏へ上がり、私が下に残るわ。そして私が上へ投げ上げるからあんたが巻いて下の私に投げ下ろしたら、それでいいじゃないの」「そうか、そうしよう」と亭主は言った。そしてそのようにした時、亭主は言った。

    「巻いた糸は煮なければならない。」

    女房は再びうんざりした。そして言った「そうね、明日の朝早くそれを煮ましょう」

    だが、女房には密かなたくらみがあったのだ。朝早く、女房は起きて火をおこし、その上にやかんを載せ、そして糸の代わりにひとかたまりの麻屑を投げ入れて煮たのだ。まだベッドで眠っていた亭主のところへ行き、「私は今から出かけなければならないから、すぐに起きて火の上にあるやかんの中の糸をみてちょうだい。すぐにね。もしおんどりが鳴いたら。麻屑になってしまうから。早くね」

    亭主は喜んだ。作業は苦ではなかった。しかし、亭主が台所のやかんのところへやって来て中を覗き込んだとき、愕然とした。その中のものは麻屑になっていたのだ。このかわいそうな男はネズミのように小さくなり、これが自分の怠慢のよるものだと自分を責めた。その後、亭主は糸や糸巻のことには一切ふれなくなった。

    しかし、あなたもこの女房は何とも憎たらしい女だということを認めているのではありませんか。

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