なでしこ

『なでしこ』の解説

  • タイトルなでしこ
  • 著作者グリム兄弟
  • 書籍名なでしこ
  • 制作年?
  • 製作国不明
  • 言語不明
  • 著作権状態パブリック・ドメイン
  • 『なでしこ』の全文

    昔神が子供をお授けにならなかった王妃がいました。毎朝彼女は庭園に出て天の神に息子か娘を授けてくださるようにお祈りをしました。すると天から天使が彼女の元に降りてきてこう言いました。「安心おし。あなたはこれから望みを叶える力を持った息子をひとり授かりますよ。彼が望むことはなんなりとその通り叶えることが出来るのです。」そこで王妃は王の元へ行き、その喜ばしい知らせを伝えました。

    そしてその時が訪れ、王妃が息子を生んだとき、王は歓喜に溢れました。毎朝王妃は子供と共に野獣が飼われている庭園に行き、そこにある清い川の中で自身の体を洗いました。子供が少し大きくなったある日、こんなことが起こりました。子供が母の腕の中に抱かれている時、王妃は眠りに落ちてしまったのです。その時、その子供が望みを叶える力を持っていると知っている年老いた料理人がやってきて、子供をさらって行きました。そしてその男は雌鳥を捕らえ、それを細かく刻み、その血を王女のエプロンとドレスの上に垂らしました。それから男はその子供を秘密の場所に連れて行きました。そこでは一人の乳母が無理矢理その子に乳を飲ませられました。

    そして男は王の元へ急ぎ、王妃の不注意で子供を野獣に連れ去られてしまったのだと王妃を責めたのです。王は王妃のエプロンに付いた血を見てこれを信じ、あまりに激昂した彼は、中から太陽も月も見えないような高い塔を造るよう命じ、彼の妻をそこに閉じ込め、塀で囲みました。王妃は七年の間食べ物も飲み物も与えられずここで過ごし、餓死させられることになったのです。

    しかし神様は天から白い鳩の姿をした天使を二人よこして下さり、七年の時が過ぎるまで、その鳩が一日に二度王妃の元に飛んで来て、彼女に食べ物を運んだのです。

    しかし料理人はこう思いました。(もしもあの子が望みを叶える力を持っていたとして、私がここにいるなら、彼は容易に私を窮地に追いこむことが出来のではないか。)そこで彼はお城を離れ、もうすでに言葉がしゃべれるほど大きくなっていた男の子の元へ行き、その子にこう言いました。

    「君が住める庭園付きの美しいお城とそれに付随する全ての物が手に入るように願いなさい。」

    男の子がまだほぼ何も願いの言葉を発していないのに、男の子が願った全ての物がそこに現れました。少したってから料理人は男の子にこう言いました。

    「君がひとりぼっちでいるなんてよくないよ。君に付き添うかわいい女の子が現れるように願ってごらん。」

    そこで王の息子はそのような女の子が現れるように願いました。するとかわいらしい女の子がすぐに彼の目の前に現れたのです。その女の子はどんな素晴らしい画家もその美しさを十分描くことが出来ないほど美しい容姿をしていました。二人は一緒に遊び、お互いのことを心の底から愛しました。そこで年老いた料理人は貴族がするように猟に出かけました。

    しかし王の息子はもしかするといつか彼の父親に会いたいと思うかもしれない、そうなると自分自身が大変に危険な目にあうかもしれない、という考えがふと彼の頭によぎりました。そこで料理人は出かけて行き、少女を連れ出してこう言いました。

    「今夜男の子が眠っているときに、彼の枕元に行き、このナイフで彼の心臓を突き刺しなさい。そしてわたしのところに彼の心臓と舌を持ってきなさい。もしも君が私の言うとおりにしなければ、君の命はない。」そしてすぐに彼はその場を離れました。そして次の日に彼が戻ってきた時に、少女は言われたことをしていませんでした。そこで彼女はこう言いました。

    「どうして今まで誰一人として傷つけたことのない罪のない男の子の血を流すようなことをわたくしがしなけらばならないのですか。」

    料理人はもう一度こう言いました。

    「もしもお前が言われたとおりにしないなら、お前自身の命がなくなるのだぞ。」

    彼が行ってしまうと、女の子は小さな雌鹿を彼女の元へ持ってこさせ、その雌鹿を殺すように命じました。そしてその雌鹿の心臓と舌を手に取り、お皿にのせました。そして彼女は年老いた男が戻ってきているのを確認すると、男の子にこう言いました。「あなたのベッドに横になって布団をかぶって。」すると邪悪な嫌われ者が部屋の中に入ってきてこう言いました。

    「男の子の心臓と舌はどこだ。」女の子は彼にお皿を差し出しましたが、王の息子はキルトを剥ぎ取りこう言いました。

    「老いぼれた罪深き者、お前はどうして私を殺そうとしたのだ。お前に刑を宣告しよう。お前は黒いプードルになり、首に金の首輪をつけて、燃える炭を喉から炎が吹き出るまで食べるのだ。」

    そして彼がこの言葉をしゃべり終えると、老いた男はプードルになり、首には金の首輪をつけていました。そして料理人たちが燃えている炭を持って来るよう命じられ、犬はそれを食べたのです。そしてついに彼の喉から炎が吹き出ました。王の息子はそこにもう少しの間留まり、彼の母親のことを考え始めました。そしてお母さんは今でもまだ生きているのだろうかと思いました。ようやく彼は少女にこう言いました。

    「わたしは自分の国に帰ることにするよ。もしも君が僕と一緒に来てくれるなら、生活に必要な物は全て用意するよ。」

    「ああ、」彼女は答えました。

    「そこまでとても長い道のりです。それに私のことを誰も知らない未知の土地でわたしはどうして過ごしましょう。」

    少女はあまり行きたがっていないようだし、それに彼らはお互いから離れることが出来なかったので、彼は少女が美しいなでしこの花になるように願いました。そしてなでしこになった彼女を自分と一緒に連れて行ったのです。

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