ものぐさハリー

『ものぐさハリー』の解説

  • タイトルものぐさハリー
  • 著作者グリム兄弟
  • 書籍名ものぐさハリー
  • 制作年?
  • 製作国不明
  • 言語不明
  • 著作権状態パブリック・ドメイン
  • 『ものぐさハリー』の全文

    ハリーは怠け者だった。毎日一匹の山羊を牧草地に連れていく以外何もすることがなかった。そんな簡単な仕事にもかかわらず、一日の仕事が終わって家に着くと、ぶうぶう文句を言った。

    「全くきつい仕事だ。なんてうんざりするような仕事だ。」ハリーは言った。

    「こうやって毎年毎年秋が深まるころまで、ヤギを野原に連れていく仕事なんて。横になって寝ていられたらなあ、でも無理だ、ちゃんと見張っておかなきゃならない。山羊がまだ小さい木を傷つけたり、生け垣のほうに行ってぐいぐい無理矢理通り抜けて、庭のほうに行ってしまう。それで逃げちまう。どうやって休みを取れっていうんだ。人生に安らぎ、ってのはないのか。」

    ハリーは座ってあれこれ考えた。どうやってこの肩に重くのしかかった負担をおろせるかよく考えた。しばらくあれこれと考えていたが、どの考えもまったく無駄なものだった。でも突然、目から鱗が落ちたみたいに、考えが浮かんだ。

    「そうだ!わかったぞ!」

    ハリーは叫ぶように言った。

    「おデブのトリーナと結婚しよう!トリーナも山羊を一匹飼っている。おれの山羊を一緒に連れ出してくれるぞ。そしたらもう、おれはなんにもしなくていいんだ。」

    そう言うと、起き上がって、かったるい足を動かした。そして通りを真っ直ぐ横切って行った。というのも、おデブのトリーナの両親か住んでいるところへ行くのに、最も近道であったからだ。そして、勤勉で高潔なお嬢さんと結婚を、と申し出た。トリーナの両親はちょっとだけ考えて、「類は友を呼ぶ、ということだ。」と思って、結婚を許した。

    こうして、おデブのトリーナはハリーの妻になり、トリーナは二匹の山羊を連れていくようになった。ハリーはそれに満足していた。休みたいと願っていた仕事はなくなって、のらくらしているだけでよくなった。

    ハリーはたまに羊を連れていく妻に連れ添って、こう言った。「こうするのは単に、あとでもっと休みを楽しむためなんだ。でないと、休みをなんとも感じなくなってしまうからね。」

    しかし、おデブのトリーナも負けず劣らず怠け者であった。トリーナはある日、言った。

    「ねえ、ハリー、なんで必要もないのに、せっせと働いて暮らさないといけないの。わたしたちの青春が台無しじゃないの。あの二匹の、朝からバーバー鳴いて、わたしたちの甘い朝の眠りの邪魔をする山羊たちを、お隣さんに差し上げたらどうですの?山羊たちと交換に蜂の巣箱をもらえるわ。それを日当たりの良い裏庭に置きましょう。それで、わたしたちは楽ができるわ。ミツバチっていうのは、お世話したり、野原に連れていったりする必要はありませんのよ。自分で飛んで行って、帰りの道も分かってて、また家に自分で戻ってくるのよ。それから、ほとんど手間もかからずに、蜂蜜を集めてくるのよ。」

    「賢いことを言うじゃないか。」とハリーは答えた。

    「さっそく、そうしよう。それだけじゃないぞ、蜂蜜っていうのは、うまくて、栄養もある。山羊の乳よりいいんだ。それに、保存も利くしな。」

    隣の人は喜んで、二匹の山羊と交換に蜂の巣箱をくれた。ミツバチはせっせと朝早くから夕方遅くまで巣箱から出たり入ったりして飛んでいる。巣箱は、なんともすばらしい蜂蜜でいっぱいになった。そうして、秋には、ハリーは壺いっぱいの蜂蜜を取ることができた。

    二人は寝室の壁に取り付けられた棚に壺を置いた。壺を盗まれたり、ねずみが見つけたりするといけないと思って、トリーナは、頑丈なハシバミの棒を持ち込んで、自分の寝台の脇に置いた。こうしておけば、無用に起き上がることなく、すぐに棒を取って、招かれざる客を追っ払うことができる。

    怠け者のハリーは昼前にベッドから離れるのは好きではなかった。ハリーは「早く起きてもくたびれるだけだ。」と言った。

    ある朝のことだった。昼の明かりの中、ハリーはまだふかふかの羽毛布団に身を沈めている。長い眠りのあとでそのまま休んでいたたハリーは、妻に言った。

    「女っていうのは、甘いもの好きだな。おまえは、いつもこっそりと蜂蜜をなめているだろう。おまえが全部食べてしまう前に、小さいひなを連れたガチョウと交換したほうがいいだろう。」

    「でも」トリーナは答えた。「ガチョウの世話をする子どもが生まれるまでは、いけませんわ。ちいさなガチョウのことで自分のことが心配でなりませんわ。無駄に自分の体力を使ってしまうんじゃないかって。」

    ハリーは言った。

    「子どもがガチョウの世話をすると思っているのか。近頃では、子どもというのは、もう言うことを聞かない。自分のしたいことをするってもんだ。自分の親よりも自分のほうが利口だって思ってるんだからな。
    ちょうど、牛を探しに行かされたのにもかかわらず、三羽のツグミを追いかけまわしていたいたやつみたいにな。」

    「まあ。」トリーナは答えた。「もしわたしの言うことを聞かない子なら、お仕置きしますわ。棒を持って、その子をもう数えきれないくらい打ち付けてやりますの。ほら、ハリー!」

    と熱心に説明して叫んで、ネズミを追っ払うための棒をつかんだ。

    「ほら見て。こうやって打つのよ。」

    トリーナは打とうとして、腕を伸ばした。しかし、残念なことに、ベッドの上の蜂蜜の壺に当たってしまった。壺は壁にぶつかって落ち、バラバラになってしまった。そして上等な蜂蜜は床に流れ出てしまった。

    ハリーは「ガチョウの世話をする必要がなくなったな。しかし、自分の頭の上に壺が当たらなかったのは幸運だった。何事も、運だと思って、あきらめて受け入れなきゃならない。」と言って、まだ壺の破片に蜂蜜が残っているのを見て、手を伸ばして明るく言った。

    「ほら、おまえ。まだおいしく食べられるよ。びっくりしたよ。さあ、少し休もう。重要なことって言ったら、起き上がるのはもう少し後にするってことだ。一日ってのは長いんだ。」

    「ええ。そうね。」とトリーナは答えた。

    「わたしたちって、いつも一日の終わりにきちんとたどり着いていますものね。あなたはご存知かしら。あるとき、カタツムリが結婚式に呼ばれて、出かけたの。でも、子どもの洗礼式の時に到着したのよ。家の前でカタツムリは柵から転げ落ちてしまったの。そして、こう言ったわ。『急いては事をし損ずる』」

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