アリとキリギリス

『アリとキリギリス』の解説

この物語は、イソップ物語(寓話)に収録されている物語の1つ。イソップ物語は、古代ギリシャ人のアイソーポス(イソップ)が集めた寓話とされているが、古代メソポタミアや歴史を通じて様々な寓話・物語が加筆修正され、現在の形になったものとされている。

現在に伝わる物語話は、15世紀頃からキリスト教的価値観を盛り込まれた寓話・説話として語り継がれてきたものが元になっており、いくつもの版を経て世界各国に広まっている。ギリシャ語の原典があったかは不明だが、古代ギリシャ語やラテン語などによって後世に編集された。

  • タイトルアリとキリギリス
  • 著作者イソップ(アイソーポス)
  • 書籍名 イソップ物語(寓話)
  • 制作年B.C.619?年 - B.C.564?年
  • 製作国ギリシャ
  • 言語不明
  • 著作権状態パブリック・ドメイン
  • 『アリとキリギリス』の全文

    ある夏の暑い日、一匹のキリギリスが草の上で日光浴をしていました。

    「なんていいお天気だ」と彼は言いました。

    「お日さまは輝いているし、食べる草は山ほどある。」

    キリギリスは朝の間ずっと草を食べ続け、もうこれ以上食べられない程お腹がいっぱいになりました。

    「ようし!」と彼は言いました。「演奏の時間だぞ」

    彼は後ろ脚を羽にこすりつけてブンブンと大きな音を奏で始めました。

    「なんてすばらしいんだ」とキリギリスは言いました。「これぞ、キリギリスの奏でる最高の音楽というものだ」

    すると、「その音やめてくれないか」と通りかかったアリが言いました。

    「なんだって?」とキリギリスが聞くと「僕は今仕事中なんだ」とアリが言います。

    「その音は頭が痛くなるんだ」

    「君は僕の演奏が気に入らないのかい?」とキリギリスが聞くと、「ああ、確かに」とアリが言いました。

    「どちらにせよ、音楽について議論している時間は僕には無いんだ。忙しいからね」

    「忙しい?」とキリギリスが言いました。「いったいどんな用事で忙しいって言うんだい?こんな素敵な朝に!」

    「食料を運ばないといけないのさ」とアリが言いました。

    その時、キリギリスはアリが大きなトウモロコシの穂を引きずっていることに気づきました。

    「そいつはえらく重そうだな」とキリギリスは言いました。「いったいそれをどうするつもりなんだい?」

    「これを巣に持っていくのさ」とアリが言いました。

    「なんのために?」

    「冬のための食糧さ」とアリが言いました。「冬に向けて準備が必要だからね」

    「なんで?」とキリギリスが言いました。「冬なんかまだまだ先じゃないか。冬は……冬にならないと来ないんだし。今は夏だろ?なんで冬の心配なんかするんだ?」

    「僕らはいつも冬の心配をしているのさ」とアリが言いました。「夏の間中、冬の食糧を集めているんだ。アリはいつだってそうしてるのさ」

    「キリギリスはそんなことはしない」とキリギリスは言いました。「僕たちキリギリスは、夏の楽しみ方を知ってるのさ、食べて…寝て…かっこいい音楽を奏でて…最高だろ!僕たちキリギリスは、どう生きるべきかを知ってるんだ」

    「わかったよ」とアリが言いました。「好きにすればいいよ」

    「おい、行くなよ、アリ君、一緒に遊ぼうぜ」

    「駄目だよ」アリが言いました。「言っただろ。僕にはやらなきゃいけないことがあるんだよ。」

    そう言うとアリは、トウモロコシの穂を引きずりながら畑を横切って行きました。

    「好きにしろ!」とキリギリスは大声で言いました。「知るもんか、僕にだってやらなきゃならないことはあるんだ。この草を食べたり、お日さまの光を浴びたりして楽しむのさ、だからもう二度とアリなんかとつまらないおしゃべりはしないからな。アリってのはなんて愚かな生き物なんだ!」とキリギリスは叫びました。

    冬になりました。キリギリスは寒くて寒くて、飛び跳ねることも、音楽を奏でることも出来ません。そしてとてもお腹がすいていました。彼は1日中食べ物を探して回りました。

    そして、あのアリに会いました。

    「やあアリ君」キリギリスは震えながら言いました。「僕を覚えてるかい?」

    「ああ」とアリが答えました。

    「寒いね」とキリギリスは言いました。すると「僕の巣の中はとても温かいよ」とアリが言いました。

    「食べ物も見つからないんだ」とキリギリスが言うと、「僕たちはたくさん持ってるよ」とアリが言いました。

    「僕たちの貯蔵庫は、種やトウモロコシでいっぱいだよ。春が来るまで僕たちは何の心配もしなくていいほどたくさんの食料があるのさ」

    「たくさんの食料?」とキリギリスは言いました。「なぁ…君…僕はあの時、わかっちゃいなかったんだ。君だけが頼りなんだ…」

    「君は言ったよね、アリはなんて愚かな生き物なんだって」とアリは言いました。

    「本気で言ったんじゃないよ。ただの冗談だったんだ。なあ、頼むよ!トウモロコシを1、2本だけでいいんだ。分けてくれよ。食べる物がなんにもないんだよ」

    「悪いね」とアリが言いました。「手に余る程物が沢山あるうちに蓄えてさえいれば、困ることにはならなかったんだよ」

    そしてアリは、もう二度とキリギリスに会うことは無いだろうと思いながら、温かい巣へと戻っていきました。

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