仲のいい猫とネズミ

『仲のいい猫とネズミ』の解説

  • タイトル仲のいい猫とネズミ
  • 著作者グリム兄弟
  • 書籍名仲のいい猫とネズミ
  • 制作年?
  • 製作国不明
  • 言語不明
  • 著作権状態パブリック・ドメイン
  • 『仲のいい猫とネズミ』の全文

    ある猫が1匹のネズミと知り合いになった。猫はネズミに深い愛情と友情を抱いていてそのことを何度もネズミに言ったものだから、ネズミはしまいには猫と一緒に住むはめになった。

    猫は言った。「でも、冬支度をしなくてはいけないね。さもないと空腹に襲われることになるから。小さなネズミさんは危険を冒してあちこち行ってはいけないよ。いつか罠にかかってしまうから。」

    その良き助言は守られ、彼らは脂身の入ったつぼを買った。しかしそれをどこに置いたらいいのか彼らは思いつかなかった。考えに考えを重ねた末に猫は言った。

    「教会以外に蓄えておくのにふさわしい場所は知らないね。まさかそこから何か盗もうとする者はいないからね。つぼを祭壇の下に置いて、本当にに必要になるまでは触れないようにしておこう。」

    そういう訳で、つぼは無事に置かれた。しかし、猫がつぼのことで頭がいっぱいになるまでそう長くはなかった。

    猫はネズミに言った。「小さなネズミさん、ちょっと話したいことがあるの。私のいとこが男の子を産んで、私は洗礼の際の名付け親になってくれるように頼まれたのです。その子は茶色のぶちの白猫で、洗礼式に立ち会うことになったのです。今日は外出させて下さい。留守番をお願いしますね。」「いいですよ。」とネズミは言った。

    「ぜひ行ってきて下さい。何かとても良いものが手に入ったら、私のことも思い出してほしいわ。甘くて赤い洗礼のワインが一滴でもあったら飲みたいわ。」

    しかし、それはまるっきり嘘だった。猫にはいとこなんておらず、名付け親になるようにも頼まれてはいなかった。猫はまっすぐ教会に向かい、脂身のつぼに忍び寄り、脂身を舐め始めた。そして脂身の上の部分を舐め取った。それから、町の屋根の上を歩き、廻りを注意深くうかがいながら、太陽の光の中で背伸びをした。また脂身のつぼのことを考えては舌なめずりをした。

    帰宅したのは夕方前であった。「ああ、帰ってきましたね。」とネズミは言った。「きっと楽しい日だったんですね。」「何もかもとても楽しかったわ。」と猫は答えた。

    「その子に何て名前をつけたんですか?」「上を頂き」と猫は全く涼し気な顔で言った。「上を頂きですって!」とネズミは叫んだ。「それはまたずいぶん奇妙で珍しい名前ですね。あなたの家族では普通の名前なのですか?」

    「どういう意味?」と猫は言った。

    「ネズミさんの洗礼を受けた子どもたちが呼ばれているような、パンくず泥棒より悪くはないわ。」

    やがて、猫はまたにわかにつぼのことで頭がいっぱいになった。猫はネズミに言った。「 お願いがあるの。 もう一度、一日だけ留守番をしてほしいの。また名付け親を頼まれてしまってね。その子は 首のまわりが白くてね、断れなかったの。」善良なネズミは頷いた。しかし、猫は町の壁の後ろをはって教会へと忍び寄った。そしてつぼの脂身の半分を貪り食った。

    「人付き合いを避けることほど良いと思えることはないわ。」と猫は言った。そして、一日の作業に対し心からの満足を覚えた。猫が帰宅した時、ネズミは聞いた。「その子の洗礼名は何だったの?」「半分頂き」と猫は答えた。

    「半分頂きですって!何を言っているの?今までそんな名前は耳にしたことはないわ。教会暦の中にも間違いなくないでしょうね!」 まもなく猫はもっと舐めたくて口の中によだれが溜まり始めた。「良いことはすべて重なるものだわ。」と猫は言った。「 また名付け親を頼まれたの。その子は真っ黒で、手足だけが真っ白で、全身には一本も白い毛がないのよ。こんなことは数年に一度しか起こらないわ。私を行かせてくれるでしょ?」「上を頂き!半分頂き!」とネズミは答えた。 「あまりにも奇妙な名前です。つい考えこんでしまうんですよね。」「家で座っていなさい。」と猫は言った。「ネズミさんは濃い灰色の毛皮と長いしっぽを持っているし、空想で頭がいっぱいです。だからあなたは昼間は外に出てはいけないのです。」

    猫が出掛けている間、ネズミは家のそうじをし、片付けをしたが、 貪欲な猫は脂身のつぼをすっかり空にしてしまった。「すべてたいらげられると、安らぎを感じるものだ」と猫は独り言を言い、満腹になり、お腹をぱんぱんにふくらませ、夜になるまで家には帰らなかった。ネズミはすぐにどんな名前がその3番目の子につけられたのか聞いた。

    「今までの名前よりも気に入らないと思うわ。」と猫は言った。「彼はすっからかんと呼ばれるの。」 「すっからかん」とネズミは叫んだ。「それは最も疑わしい名前だわ!文字になっているのを見たことがない。すっからかん。どういう意味なのかしら?」ネズミは頭を振り、体を丸め、横になり、眠りについた。4番目となると猫に名付け親になるよう頼む者は誰もいなかったが、冬が来て、もはや外には何も見つかるものがなくなった時、ネズミは食料の蓄えのことが頭に浮かんだ。

    「猫さん、来てくれない。私たちが蓄えていた脂身のつぼのところへ行きましょうよ。それを楽しむのよ。」「いいわ。」と猫は答えた。「ネズミさんはその優美な舌を窓から突き出すのを楽しんでいたのと同じように脂身のつぼを楽しむといいわ。」彼らは出掛けた。しかし、彼らが着いた時、脂身のつぼは確かにまだその場所にあったが、中身は空っぽであった。「ああ!」ネズミは言った。

    「何が起こっていたのかわかったわ。今、それが明らかになった。親友である猫さん!あなたは名付け親をしている時に全部食べ尽くしてしまったのね。最初に上を頂き、それから半分を頂き、それから・・・」

    「口をつぐんでくれない?」と猫は叫んだ。「ひと言でもしゃべったら、あなたも食べちゃうぞ。」「すっからかん」はすでに哀れなネズミの口にのぼった。ネズミがそれを口にするかしないうちに、猫はネズミにとびかかり、捕まえ、ごっくんと飲み込んだ。

    信じよ、それが世の習いというものである。

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